自己評価・相互評価にも「5ラインズ」が活用できるのではないか、と考えられた方もいらっしゃることでしょう。
実際、小学校高学年以上であれば、活用可能であることが実証されています*1。(中学年以下では活用できないということではなく、未だ検証されていないということです。)
とはいえ、残念ながら、単に教師からトップダウンで与えるだけでは、あまり効果が上がらないことでしょう。
実践を積み重ねてきた結果、自己・相互評価に活用するためには、子供たちが自分たちのものとして取り入れられるような工夫が大切であることが明らかになりました。
まず、効果検証に取り組んだ学級(5年生)では、まずは3本のラインにしぼって理解を図り、相互評価し合う活動に取り組みました。実感としては、説明で理解できる子は半数程度で、そのうち主体的に活用できる子は一握りといったところでした。むしろ、3本のラインを意識しながら相互評価に取り組む中で、友達の姿から具体的につかんでいくケースが多いようです。実際、相互評価を数回取り組んだ後、活用する様子がどんどん見られるようになっていきました。
しかも、対話活動を重ねているうちに、残りの2本に関する発話も現れ始めていきました。
また、はじめのうちは、観点をしぼっての相互評価やアクティビティに取り組み、しだいに観点も活動も開いていく(=個人目標を立ててフリー対話に取り組む)ことも実践的な手立てとなります。
掲示物を工夫するのも効果的なようです。
下に示した1つ目の掲示では、「5ラインズ」を花の形にして示し、「みんなで協力する」「はっきりさせる」「理由を知る」と3つのラインの名称を変更しているのが分かります。
私はこれで良いと考えています。ラインの名称は、子供たちがイメージしやすいもので共有していくと良いでしょう。
また、両方の掲示物に共通するのは、「5ラインズ」に私が取り上げたスキルを全ては提示していないということです。
実は、これらの掲示の写真は、いずれも年度の後半に撮影したものです。
年度の初めは、スカスカの状態でした。
すなわち、はじめから完成体を与えるのではなく、子供たちから出てきた発言を価値づけ、「5ラインズ」の掲示に位置付けていくという方法をとっているのです。
少しずつ増えていくことで、どの子も具体的に理解しやすくなりますし、何より「自分たちのもの」という意識を高めることが期待できます。
対話の学びでは、「ヨソモノ」を与えられただけでは、なかなか定着しないのです。
即効性を求めるよりも、じわじわ広がっていく様子を見守れる教師の構えも大切なポイントです。
*1 以下のURLより「自己・相互評価の支援を通じた児童の対話力向上への取組 : 小学5年生を対象とした指標としての「5ラインズ」の効果検証」の論文をご参照ください。