自律的で建設的な話し合いを育むためには、子供たちが話し合いを「展開する力」を身につけることが不可欠です。
しかし、実際の教室ではこんなことはありませんか? 「意見はたくさん出るけれど、結局堂々めぐりで終わってしまう」 「司会はいつも特定の子に任せきり。他の子はどこか他人事」 「教師が用意した進行表をなぞるだけで、中身が深まらない」
私自身、全員に話し合いをリードする経験をさせたいと願いつつ、つい「上手な子」に頼ってしまうもどかしさを経験してきました。学習指導要領(国語科)でも「計画的な話し合い」や「進行の仕方」が重視されていますが、その指導は一筋縄ではいきません。
そんな課題を解決するために開発したのが、この「話し合いのプロセスカード」です。
このカードは、合意形成に向けた一連のプロセスを一つひとつ分節化し、カードにしたものです。
まずは「台本型モデル(話し合い例)」とセットで活用します。子供たちはカードを使いながら、「今、どの場面の話し合いをしているのか?」を分析的に捉えます。 「教科書に書いてあることを読む」受動的な学習から、「この場面ではこの言葉が有効なんだ!」と発見する主体的な学びに変わります。また、カードをシャッフルして「正しい順序に並び替える」活動を取り入れることで、プロセスの構造をゲーム感覚で深く理解させることも可能です。
実践の結果、効果的な活用方法として次の2パターンが見えてきました。
パターンA:ホワイトボードでの「スゴロク型」提示 全てのカードをホワイトボードに掲示し、今どこを進んでいるのかマグネット等で示しながら進める方法です。【工夫】 ホワイトボードの空き地に、話し合い後の振り返り(よかった点、次にがんばりたい点)を書いておきます。そうすることで、次の話し合いでは自分たちの目標をもって話し合う様子が多く見られるようになります。 【効果】 全員が同じプロセスを「共同注視」することで、司会だけでなく参加者全員に「自分たちで進めている」という当事者意識が芽生えます。
パターンB:イーゼルによる「卓上提示」 厚紙に貼ったカードを、話し合いのグループごとに立てて提示する方法です。 【工夫】 カードの裏面に「司会の言葉の例」を書いておくと、司会の子が困ったときのお守りになります。 【効果】 ホワイトボード型よりも司会者のリードが中心となりますが、周りの子たちもカードを指さしする等して進行に加わります。一方で、カードの順序が誤っていても、そのまま進んでしまうこともあるため、注意が必要です。
どちらの方法も、これまでの「能力の高い子に依存する司会」とは全く異なる姿を見せてくれました。たとえ完璧に進まなくても、参加者から「そろそろ次のプロセスに行こうよ」と声が上がるなど、全員で進行を支え合う意識が高まったことは大きな成果です。
「話し合いのプロセスカード」が、子供たちの言葉を繋ぎ、納得解を生み出す一助となれば幸いです。
ぜひ、先生方の教室でも活用してみてください。感想や「こんな工夫をしてみた!」といったお声を聞かせていただけるのを楽しみにしています。
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参考文献
・北川雅浩(2023)「話し合いの目的・プロセス意識を促す手立ての開発と検討―小学3年生を対象として― 」『国語科教育』,第94号,50-58.
・北川雅浩・溝上剛道(2023)「話し合いプロセスの効果的な共有方法の検討 」『熊本大学教育学部紀要』,第72号,1-8.
・北川雅浩(2022)「話すこと・聞くことの目標・カリキュラムに関する研究の成果と展望」全国大学国語教育学会編『国語科教育学研究の成果と展望Ⅲ』 溪水社,56-63.
・北川雅浩(2022)「話し合いを展開する力の活用を促す指導の要件の検討」『熊本大学教育実践研究』39号,25-32.
・北川雅浩(2021)「小学校中学年段階での話し合いを展開する力の育成に関する検討」『熊本大学教育学部紀要』70号,1-8.
・長谷浩也・重内俊介(2018)『合意形成能力を育む「話し合い」指導―理論と実践―』 明治図書出版